帝人・福井経編興業・大阪医科薬科大、心・血管修復パッチ「シンフォリウム」を帝人メディカルテクノロジーから販売開始

帝人・福井経編興業・大阪医科薬科大、心・血管修復パッチ「シンフォリウム」を帝人メディカルテクノロジーから販売開始

発表日:2024年05月27日
心・血管修復パッチ「シンフォリウム」
6月12日販売開始

帝人株式会社(本社 : 大阪市北区、社長 : 内川 哲茂)、福井経編興業株式会社(本社 : 福井県福井市、社長 : 高木 義秀)、大阪医科薬科大学(所在地 : 大阪府高槻市、理事長 : 植木 實)が、先天性心疾患の患者さんの課題解決のため共同開発を進めてきた心・血管修復パッチ「シンフォリウム」について、帝人のグループ会社である帝人メディカルテクノロジー株式会社(本社 : 大阪市北区、社長 : 田中 昭弘)が6月12日(水)に販売を開始します。

1.背景・経緯
(1)先天性心疾患は、生まれつき心臓や血管の構造が正常とは異なることにより、血液の循環に支障が出る疾患です。およそ100人に1人、年間で約1万人の新生児が当該疾患をもって生まれてくるとされています。治療法としては、合成樹脂や動物由来の素材で作られた医療用パッチを埋植し、血液循環を修正する手術を行います。
(2)しかし、埋植したパッチが免疫による異物反応を受けて劣化することや、心臓や血管の組織の成長に対してパッチが伸張しないことによる狭窄が発生することがあります。その場合には、パッチを交換するための再手術が必要になることも多いため、患者さんやその家族にとって身体的かつ精神的な負担となり、医療者を悩ませていました。
(3)このような課題に対し、大阪医科薬科大学の小児心臓血管外科医である根本 慎太郎 教授が”自分の組織に置き換わることで患者の成長に対応し、再手術の低減が期待できるパッチ”というアイデアを生み出し、2012年から実現に向けた研究と探索を開始しました。
(4)このアイデアに共感した福井県の繊維メーカーである福井経編興業は、創業80年間で培ってきた高度な経編(たてあみ)技術をもとに開発に乗り出し、細胞の足場となりかつ伸張可能な構造を持つ特殊な編地の実現に成功しました。
(5)さらに2014年からは帝人が参加し、マテリアルとヘルスケアのそれぞれの技術とノウハウを駆使し、特殊な編地に対して、血液漏れを防ぎかつ自己の組織に置き換わる機能を持つゼラチンを一体化する技術を開発し、心臓や血管壁を補う医療材料としての最終製品化に向けて、設計開発、臨床試験、商用生産体制構築、製造販売承認申請を進めてきました。
(6)本製品は3者での共同開発に加えて、2014年には経済産業省、2017年度からは国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)による合計6年間の医工連携事業化推進事業(補助事業課題名「術後のQOLを改善させる心・血管修復シートの事業化」)に採択されています。また、2018年には先駆的医薬品等指定制度(当時の制度名「先駆け審査指定制度」)に指定されました。加えて、日本小児循環器学会からは、治験推進活動、適正使用指針の策定で協力を得るなど、行政や学会からの多くの支援を得て実用化の道を進んできました。
(7)2019年から開始した臨床試験が2022年に完了し、2023年1月には帝人メディカルテクノロジーが厚生労働省に製造販売承認を申請し、同年7月に承認を取得しました。本製品は先天性心疾患と闘う患者さんの悩みをアカデミアが拾い上げ、中小企業と大企業がそれぞれの技術力とノウハウを持ち寄り、強い協力関係によって製品化に至った、我が国でも数少ない成功例と言えます。

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